「いや、その…。
独り言を聞かれてだな…。」


「独り言?」


「おお。
お前にあの子が来たらよろしくって頼まれてた後、あいつが出てきてよぉ。
いろいろ聞かれてた。」



ほう、いろいろと…。



…俺は終わったな。



肩を落とす偉槻を、何とか励まそうと店長が一人でしゃべり続ける。



「ま、な。
偉槻、あいつだって男だ、分別はちゃんと持ってる。
な?」


「どうでしょうね。
合コンの餌に俺を巻き込む奴ですけどね。」


「それぁ、その…。
ま、俺がフォローするから。」



店長も怪しいものだが。



どうしてこの人にあんな物静かな奥さんがいるのか理解できない。



「ほら、仕事戻るぞ。」


「…はい。」



目頭を軽く揉み、偉槻は店長の後に続いた。



「お前の時給、ちょっと上げてやるから。」


「…そんなことしていいんすか?」


「まあ、店長だからな。」



この店は店長からしてなにかがおかしい気がする。



いや、気のせいじゃない。