いつもならこんなに饒舌になることはないのに、偉槻に兄を褒められた誓耶は浮かれて自分から話を続けた。



「あたしの名前、兄ちゃんにつけてもらったんだ。」


「へぇ。
チカヤなんて変わった名前、珍しいなと思ったんだが、兄ちゃんが名付け親か。」



偉槻が興味を示したのがうれしくて。



誓耶は大きく首を縦に振った。



「兄ちゃんの名前が、泰誓だから。
誓をとって。」


「そうだったのか。
…でもまあ、兄ちゃんもえらく男らしい名前をつけたんだな。」



きっと音だけ聞いたら、男だと思ってたぞ。と偉槻は笑う。



その意見には誓耶も賛成だ。



「兄ちゃん曰く、男らしく育ってほしかったんだって。
いっそ、チカとかでよかったんじゃないかって訊いたら、普通じゃつまんねーって返ってきた。」


「変わった兄ちゃんだな。
その名前、気に入ってんだろ?」


「ああ。
あたしは誓耶だ。」



チカヤ、と偉槻が誓耶の名前を転がす。



「字面は?」



どうも気になっていたらしい。



誓耶は笑って、紙とペンを受け取った。



「こんな字。」



偉槻は誓耶の手元を覗き込む。



「ほぅ。」



紙を渡すと、偉槻はじっとそれを眺めた。



「こんな字か。」



見入る姿が可笑しくて。



大人の男がこんな顔をするんだ。