スカートなんか嫌いだ。



なんでこんなヒラヒラする動きにくいもんを制服にするのかわからない。



こんなん作るからパンチラとかするし、痴漢も増えんだよ。



誓耶は泣き付いてきた女友達を慰めながら舌打ちした。



歩いていたら痴漢にあったと言う。



たまたま誓耶が通りかかり、今睨み合っている状態だ。



前に立っているのは地味な風情のいかにもなサラリーマンで、慣れているのか無表情だ。



「お前、この子に痴漢しただろ。」


「してませんよ。
その子が嘘ついてるんです。」


「嘘つく理由なんてねぇだろ。」



するとサラリーマンはニヤリと笑った。



「近頃の子どもはムカついたってだけで何をするかわかりませんからね。
慰謝料でも欲しかったんじゃないんですか?」



どこまでこいつを辱めるつもりだ。



今や彼女はしゃくりを上げて泣いている。



「そんなことしねーよ。」



警察呼ぶぞ、と誓耶が噛み付くと、またニヤリと笑う。



「呼べばいいじゃないですか。
証拠ないですし、目撃者もいないですけどね。」



……嫌な奴〜ッ。



「じゃあ、私は失礼させてもらいますよ。」



誓耶は咄嗟に返す言葉が見つからず、結果的にそのまま見送ってしまった。



「くそっ。」



男なんか嫌いだ。



みんなまともなこと考えてない。



女を見る目がそれを物語っている。



……兄ちゃんを除いてな。 



誓耶はいつもの台詞に一言つけ加えた。



「悪かったな、特に何も出来なかった。」


「いいよぉ。
助けてくれてありがとね。」



涙を拭きながら、友達は言った。



「夜の一人歩きは危ないぞ。」


「誓耶こそ。
あんただってはた目には女なんだから、いつあんな目にあうかわからないよ?」



はた目にはとは失礼だが、まあその通りだ。