――――――


黒いスポーツタイプの車が
目の前から勢いよく
走り去るのを見送りながら

強く唇を噛み締めて
固く拳を握る。


アイツ……アキと
どいいう関係だ?


あいつらが知り合いなんて
彼女から一度だって聞いた事ない。


普段周りに壁を作ってるアキだけど
バンド仲間の俺らにはいつになく
心を開いてくれてると思ってたのに。


多くの車が
次々と目の前を通過しながら
有毒ガスを撒き散らしていき

エンジン音が騒音となって
俺の心を逆なでするように
闇の中を響き渡る。


見えるはずかないのに
アキが乗った車の行方を探す為に
眼鏡の奥の目を細め
道路の先を凝らし睨み付ける。


まるでアキが倒れたのは
俺のせいかと攻め立てるような
あの男の鋭い眼光の前で
何も出来ずにいた自分の不甲斐なさ。


人の事をバカにまくったアイツの言葉と
自分でも自覚してなかった
アキへの気持ちを一瞬で指摘されて

悔しくて
ムカついて

苦虫をかみつぶしたような
嫌悪感が広がっていく。


真夏の湿気混じりの空気が
身体の周りを緩く流れる中

すでに温もりの消えてしまった
自分の掌を開き
視線をそこに移した。


――こんな胸が焦げるような想い
俺は知らない。


その温もりの代わりに
彼女のギターだけが
まだこの場に残されてて

いつにないほど肩に重くのしかかり
鈍く痺れるような痛みとなって
ただ胸に切なく響いていた。


――――――