そのうちにふとベッドから起き上がって
部屋の入口に無造作に置いたバックの中から
一枚のCDを取り出してコンポにセットした。


やがて静かに流れだすイントロ。

すると条件反射みたいに
あのステージの興奮がよみがえってきて
身体の中が震えるほどに熱くなった。


ケイのバンドのデビューアルバム
彼の思いがたくさん詰まった曲を
エンドレスで聴く。


何度も何度も繰り返し繰り返し。


“No Heroes”

――どんなに最悪な状況でも
誰かに助けを求めたり
人生を悲観したりするのではなく

今の自分が出来る最良の方法を
そうすれば新しい道が
開けてくるかもしれない。


そんなケイの思い
曲からも伝わって

今の私が出来ること
しなきゃいけないこと

もっとよく考えて
これは私だけの問題じゃない。


私の選択次第では
迷惑を被る人も不幸になる人も
きっと出て来る。


サクラを傷付けてコウを怒らせたまま
それにハルトとは中途半端な状況で


それなのにこのままユウキに守られて
彼に支えられて生きていく
本当にそれでいいの?


そう思う傍ら
彼のぬくもりを放したくない自分もいる。


だってあの時ケイと離れてしまったから
彼にもう二度と会えなくなってしまった。


この先の人生何が起こるかなんて
誰にもわからない。


ずっとその人が生きている確証なんて
どこにもないもの。


それだったら自分の気持ちに正直に
愛してる人の傍で過ごす
そんなに幸せなことないじゃない?


後悔するのはもう嫌だから。


どうする?


何を選択するのが私にとっての最良の道?


そしてユウキにとっては?


やがて電気のつけてない部屋
真っ暗になるぐらい長い時間
自分自身に問いかけ続け
やっと出てきた一つの答え。


――私は――