裾の長いグレーのチューブトップに
ヒッコリー柄のバキーっぽいサロペット
肩の部分全部下にさげて
髪は真っ黒のストレートのまま

昔カナダで開けた両耳の穴には
小さな黒い石が揺れるピアス。
腫れた目をごまかすために
アイラインをいつもより強めにひいた。

そして左手首には
私には大分大きいサイズの
ケイの革のブレス。

特別着飾ったりなんかしないで
普段通りの1番自分らしい洋服を着た。


集合時間は会場に午後1時。

私よりも先に着いてたサクラは
この前の上野さんの言い付けを
ことごとく破って

大胆なフリル使いの黒のドレスワンピに
ヒール15センチのサンダル
コールドのアクセ。

予想通りで思わず笑った。


コウはオレンジの髪をねじって立たせて
紙パックの烏龍茶を飲みながら
緊張のカケラもしてない顔でニヤニヤ。


ハルトは全くいつも通りの感じで
眼鏡のフレームをいじりながら仏頂面。

これまた予想通り。


会場の入口の横に張ってある
大きなポスターの文字は

『Down Setインディーズラストライブ』

200*.8.22(SUN)
START PM5:00


ケイのバンドDeep Endが
デビューアルバムを出したのは
ちょうど一年前の今日。


ユウキがわざと合わせたとしか
考えられない日付の一致。


いったい彼は今日という日を
どんな想いで臨むんだろう……。


お互い場所は違っても
ずっと励ましあって戦ってきた同士。

ケイを亡くした今。

私にはまだ計り知れないレベルの
はるかに高い音の世界で
歌う意味
上を目指す覚悟。


きっと彼の方がケイの事
私よりも数倍深く理解してる気がする。

悔しいけどこれは確かだ。