「俺が歌止めた時
ケイに相談、てか報告したんだ。
……したらその返事メールに
曲添付してきて“聴け”ってさ。

スゲーぶっ飛んだよ。
上手いとか下手だとかそれ以前の問題で
だってお前の歌
音楽が好きで楽しくって
仕方がないってくらいキラキラ輝いてて。

歌を始めた頃の純粋な気持ち
蘇ったっつーか
……本当衝撃的だった。

それにケイはケイで
俺に喧嘩吹っかけてくるし
俺も負けず嫌いだから
このまま歌止められっかって。
ぶん殴られようが勘当されようが
どうなってもいいから
両親説得しようって思ったんだ。

だから今俺がこうしてられんの
お前達兄妹のおかげなんだ。
マジで感謝しても
しきれないぐらい」

「そんなの……」


そんな事いきなり言われても
何て返事していいかわからない。

こんな風に自分の知らないところで
誰かの人生に影響を与えてたなんて。


それに、昔ケイに別れ際に言われた言葉
私の歌がどうとか、
そんなの自分では全く感じないし
実感なんかまるでないんだ。


ただ、
あの事件のせいで歌うこと怖くなって
でも音楽からは離れられなくて
そんな中途半端な気持ちで
ギター弾いてる自分が
恥ずかしくて堪らなかった。


――そしてしばらく沈黙が広がった後
ユウキが顔をこちらに向け
真っすぐに私を見た。


「――そうやって長い事
お前達の事見てきたから
二人がどんなに強く
お互いを思い合ってたかとか
絆とか、俺は凄く知ってたつもりだから

ケイが死んだって
マイクから電話があった時
真っ先にお前の事頭に浮かんだよ。
約束信じて待ってるお前は
どうなるんだろうって」

「………」


ずっと手の平の中に握り締めてた
ペットボトルの冷たさが
足先まで伝染したみたいに
痺れたような感覚。


張り詰めたような空気が
全身に降り注ぐ。


「アキ、本当の事知りたいか?
その覚悟はあるか?」


ユウキの眼光が強すぎて
痛いくらいだったけど
でも真っすぐ彼の事見つめかえして
――ゆっくりと頷いた。