「別に俺達の間で“こうしよう”って
話し合ったわけじゃなくて
暗黙の了解的なものなんだけどさ

アキを守る鉄壁のゾーンディフェンスが
俺達自然に身についてる。

アキはケイの妹だし、
俺達に実の妹がいないって
事もあると思うけど

俺もフィルもそれにマイクも
アキの事凄く大事に思ってる
それこそ実の妹みたいにさ。

……本当はこんな事
暴露するはずじゃなかったんだけど
ケイが余りに不憫でさ」


そう言ってヴィンスは
冗談っぽく首をすくめたけど
私は笑うことなんか出来なくて

寧ろ泣きたいような気持ちで
ボールを追いかけるケイとマイクの姿を
目で追い続けた。


ケイが私を大事に思ってくれてるのは
知ってたけど
まさかこれほどまでなんて。

それに皆にも――。


いつも私が感じてた暖かくて
居心地がいい空気は
みんなが作ってくれたものなんだ。


――ウン、もうダメだ
やっぱり泣きそう。


相変わらず風が強く吹きすさび
思わずクシャミ一回。


それに気付いたフィルは


「プッ!ひでー顔。
鼻水出てるし」


とパーカーの袖引っ張って
少し乱暴に涙と鼻水
ゴシゴシと拭ってくれた後
私が抱きしめてた
マイクのジャケットを指さした。


「あとさ、アキ
それ早く着てやれ。
じゃないとマイクが不憫だから」

「……え?何が?」

「アイツが何のために
投げてよこしたのか
お前全然気付かねーし」

「う、うんっ」