――――――


『もっしもーし?
んだよ、ユウキ、
やっぱりお前も飲みに来るとか?

一人さっさと帰りやがってよ
まぁ気持ちは解るけど。
いつもの店に
みんないるからさ』

「違っ、
そうじゃなくて
ゴホッ!」


携帯の向こうから聞こえた
すでに酔っ払い気味の
ケンの声を遮るように叫ぶと
息苦しくなって激しく咳込んだ。


汗をびっしょりかいた背中に
Tシャツが張り付き
焦った心をさらに不快にさせる。


『あ〜?
どうした?
んな咳込んで風邪?
頼むよ天才ボーカリスト――』


「――アキがいなくなった!」


キョロキョロと周りに視線を向けながら
人通りの多いアーケード街を走り続け
前置きもなくそう叫ぶと

ケンがハタと空気を止めて
やっと深刻そうな声をあげた。


『は?
いなくなったってどうして?
お前何したんだよ!』

「あの眼鏡の野郎の事とか
あと昼間のライブの音とか

つい我慢できなくなって
色々言って
あいつを追い詰めた。

俺あの日何があったか
全部知ってたのに。
……また自殺とか
あいつ“わかんない”って言ったんだ!」