愛璃は2人の会話が聞こえていなかったが、聞く気にもなれなかった。
…雛は…無事でいるだろうか。
早く助けに行かないと…
そうやって、気持ちばかりが空回り…。
今すぐにでも飛び出して、探しに行きたい気分だった。
それに比べて脩人は何気に余裕そうだ。
珱魅と何か話している…
「そうかもねって…そんな他人事みたいに何」
「記憶喪失」
「…え?」
珱魅は脩人の言葉を遮るように、ポツリと呟いた。
「…記憶喪失…みたいなもの、かな」
「……」
脩人は言葉を見失ったように、言葉の出ない口だけがぱくぱくと落ち着きなく動いている。
「…多分、こっちに来る前の記憶は全部…無い」
珱魅はふぅとため息をつくと、ソファに深くもたれかかる。
「まぁ、僕にとってはそっちの方が好都合なんだけどね」
にんまりと笑う珱魅の目は、何だか怪しげな影があった。

