「ごめんごめん、そんなに言い当てられたら嫌だよね。本当ごめん。もうこれ以上は探らないよ。」

手の平をヒラヒラと振って見せるけど、そう言う表情が、あっけらかんとしてて、逆にこわい。


「…何でわたしなんかに話し掛けたの?…幽霊だし…力弱いし…アンタ、暇潰しなら、やめてよっ」

精一杯牽制してみた。ラップ音も付けてみた。
それがパリーンって、軽い音過ぎて、意味無いなって、自分でも嫌になった。


「悠莉さん、怖がらないでよ、本当にさ。ごめん。
 それにアンタじゃなくて、謙汰だから。謙汰って呼んでよ。」

一生懸命、謙汰を睨み続ける。

「何でって言われてもなぁ……悠莉さん、ずっとここいるじゃん?俺、近所だし、結構見かけてたんだけど、今日は、一際寂しそうな背中してしゃがんでるから、声かけちゃったんだよね。」

「……」

「俺と話してみない?『暇潰し』に、さ?」


「…本当に、何もしないの?」


だって、ナベタさんも言ってたもの。『力の強い生身の人間には近付くな。喰われるぞ。』って。
ナベタさんって、力の強い地縛霊のオバチャンなんだけど、この辺りで仕切屋というか世話焼きオバチャンみたいな人、幽霊界の。


「……何話すってゆーのよっ」

謙汰はあきれたような笑顔で言う。

「どうしようかな。悠莉さんの事きいても、嫌っぽいし。逆に俺にきいてみたい事ない?生身の人間と話してないだろ?長い間」

確かにずっと話なんてしてないけど、急に言われても何も思いつかない。

「家族とか友達のコトとか、気になる事ない?」

……ママ、パパ、おじいちゃん、お兄ちゃん…
家には行けるから、どうしてるかは知ってる…
みんな、わたしが見えていない…ママは私の死をまだ受け入れられていない。よく一人で泣いてる…
あたたかかった家は、ひんやりと静かな空気が漂うようになった。
行きたいけど…いるといたたまれなくなって、ここに戻って来てしまう。