今日もわたしはいつもの交差点でフワフワしてた。

わたしが居られる場所は限られてます。

自分の死んだ、この交差点。
自分の家。
通ってた高校。

だいたいその近辺くらいにしか居られません。

自分の思いの遺っている所辺りです。


力の強い幽霊さんなら、そういうのも関係なく、どこまでもズンズン行けちゃうらしいけど。





「あ〜あ、今日は誰も通らないよぉ」


月明かりも明るくて、キレイな夜なのに、人っこ一人通らない。

さっき猫が一匹通ったけど、無視されちゃった。わたしがいる事、絶対気付いてた風だったけど、一瞥して行ってしまった。
猫にも怖がってもらえないわたし。
せめて、相手にしてくれたらな。
そしたら、寂しくないのに…


交差点の真ん中にしゃがみ込んで、何となく、白いラインの上に、小石を並べてた。




「ねえ、お姉さん、何してんの?」


男の声がした。

誰か来たみたい。
座ったまま、周りを見回してみたけど、誰の姿も無い。


「お姉さん、こっち、後ろだよ。」


また声がして振り返ってみると、男がいた。わたしと同じくらいの年頃の感じ。

横断歩道の真ん中に立って、まっすぐこっちを向いていた。
ちょうど後ろの方向に月があって、あまり顔が見えない。

お姉さんって…誰か他にいたっけ、と周りを見回してみたけど、誰もいなかった。


「お姉さんって呼んでるの、君のコトだよ、こっち来て、幽霊さん」

そう言って、横断歩道を歩いて行く。


………!?…わたし??


「ねぇ、聞こえてるんだから、反応しなよ。え〜と…『かすみさん』?」


え〜!え〜!わたし見えてるの?そして呼んでるし。


中腰のまま、驚いて固まってるわたしに、また声をかけてきた。

「『かすみ ゆうり』さん、話ししたいから、こっち来いって、君、反応トロイよ。」


完全にわたしの名前を呼んだ。何、コイツ、タダ者じゃないわ…

何か行きたくないけど、行かないと怒られそうな雰囲気があったので、ユラユラ近付いて行った。