「ほら、行くぞ。」


田中先輩がまた悪魔な言いつけをしてきた。
(散々な言いようだけど仕方ない!)


「え~っ…やですっ」

「俺に口答え?」

「ううっ!さよならっ!」


だっと走り出そうとしたあたし。
だけど、あえなくあたしの腕は
ある人物により捕まえられた。


「田中先輩っ!」


かと思ったら。


「ななっ…中島先輩!」


そう、あたしの腕を掴んだのは、
まさかまさかの中島先輩だった。


「しーおりちゃんっ」

「何ですか?あたし逃げたいんですけど…」

「うん、わかったよ。」

「あ、じゃあ離してもらえますか?」


遠慮がちにそう先輩に言うと、


「一緒についてきてくれる?」

「え?」


中島先輩は優しく、でも少し強く
あたしの腕を掴んで引っ張っていった。

なんとなく、本当になんとなく。
田中先輩の方を見ると。
なんだか悔しそうな顔をしていた。
というか、泣きそう?

まさかね。あの田中先輩が泣くはずない。
うん。そうだそうだ。あんなに意地悪なんだもん。