結局昨日は、

病状のことに関して

何も聞けずに帰った。



茉莉が眠ってしまい、

面会時間が終わって

しまったからだ。



今日は落ち着いて、

ちゃんと話を聞こう。



病室の前に着き、

ドアをノックした。



しかし返事がない。



眠っているのかと、

ドアを開けようとした時、

声がした。



「城戸さんなら
屋上に居ると思いますよ」



声の方を見ると、

看護師さんがいた。



「屋上…ですか?」



「ええ…
彼女天気のいい時は、
屋上に夕陽を
見に行ってますよ。
ちょうど正面に
夕陽が沈んでいくから
綺麗ですよ」



「そうなんですか…
じゃあ行ってみます。
ありがとうございます」



僕は一礼して、

屋上に向かった。



屋上に上がると、

オレンジ色の世界が

広がっていた。



さっきの看護師さんが

言った通り、

真っ正面に夕陽があった。



その夕陽の放つ

オレンジの光の中に、

茉莉の後ろ姿があった。



僕はそんな彼女を見て、

初めて逢った時の

ことを思い出した…



ステージの上の存在

だったマリと、

ファンの一人だった僕。



偶然乗り合わせた

電車で、初めて対面した。



あの時の茉莉も、

今みたいにオレンジの

光に照らされていた…



もしあの時、

同じ電車に乗って

いなかったら、

僕らはどうなって

いただろう…



そんなことを

考えながら、

茉莉の元へと歩みを

進めた。