彼女の母は、

僕に扉の前で待つ

ように指示すると、

一人病室へと

入っていった。



かすかに聞こえる

病室の声。



しかし内容までは

聞き取れない。



落ち着け…

落ち着け…

と自分に言い聞かせるも、

暴走する心臓。



やがて、

扉が開いた…



「どうぞ」



彼女の母はそう言うと、

彼女の父と共に

出ていった。



僕は恐る恐る

部屋に足を踏み入れた。



目に映る茉莉は、

布団を頭まで

かぶっていた。



声をかけられないまま

歩み寄り、

ベットの横の椅子に

座った。



前までは自然に話を

していたのに、

何故…

言葉が出てこない…



もどかしさに

引き裂かれそうに

なっていると、

彼女が動いた。



彼女は布団を鼻まで下げ、

僕の方を見た。



「何で来るのよ…
せっかくフって
あげたのに…」



彼女の眼は

少し潤んでいた。



「茉莉…
何で何も言って
くれなかったんだ…
あんなメールで
簡単に納得できるわけ
ないだろ…」



「何で?
こんな勝手で
わけわかんない奴、
忘れちゃえばいいのに…
何で…」



「体…
大丈夫か?」



僕の言葉に、

彼女の眼に溜まった

涙が零れ落ちた。



「答えになってないよ…
何でいつもそんななの?
そんなだから
別れたかったのに…」



涙声の彼女の言葉に

僕は驚いた。



「えっ?
茉莉…それどういう
意味…」