三番目のバンドが

出てきた瞬間…



僕は目を奪われた



良樹が僕に話し掛ける



「なぁ颯人?
彼女なんか凄いオーラだな。
カッコいいよなぁ」



僕はステージに

目をやったまま答えた



「あぁ…ほんとだな…」



全身から凄いオーラを放ち



何よりも…



凄く力強い目をしていた…



華奢な体格の彼女が

何だか凄く大きく見える…



そうか…



僕だけじゃなかったんだ

こんな感覚を覚えたのは…



そして…



彼女のライブが始まった。



彼女が歌い出した瞬間

更に強く引きつけられた。



圧巻だった…



僕は胸の鼓動が

少しずつ早くなって

いくのを感じていた。



力強くも優しい彼女の声は

全ての者を魅了し、

強い引力で彼女の世界に

導かれていった。



さっきまでは

あんなに帰りたかった

はずの僕なのに…


そんな考えは消え去り、

むしろ

ずっと聴いていたいとすら

思える程だった…



彼女のオーラが


彼女の歌声が


波の様に次々に押し寄せる…



何て心地いいんだ



そして…



気がつくと

ライブは終わっていた。



「いやぁ凄い!
マジ彼女凄いなぁ!!
ありゃプロデビューするねっ!うん!絶対売れるよ彼女」



良樹は興奮気味に

僕に語っていた。



僕は高鳴る鼓動を

落ち着かせるように

深呼吸をした後…


答えた



「あぁ…凄いよ。
音楽はよくわかんないけど
何か別の空間にいるみたい
だった」



そんな僕の言葉が

意外だったのか

良樹は目を丸くし…

そしてクスっと笑った。





そして…


これが恋なんだと

自覚するまでに

さほど時間はかからなかった。


そう…


僕は…

彼女に恋をした…