家に入る直前に、油絵の匂いがしたような気がして、思わず振り返った。
玉置が一生懸命書いているのを見て、油絵が好きになった。
芸術なんてこれっぽっちも分かんなかったあたしに、心ができたみたいだった。
玉置が好きなあたしが
玉置の好きなものをどんどん好きになってくように
玉置ともあたしの好きなものを共有したいな。
なんて、そんなおこがましいことは妄想の中だけだけど。
きっと今まで筆を置いてきたキャンバスも
握ってきたパレットも
玉置の味方だから。
こんだけ玉置には味方がいるんだから
明日は羽伸ばして、気楽にやってきてほしい。
先に玉置が受かっちゃうのは悔しいけど
純粋に、受かってほしいもの。
そしたらあたしも、頑張れるよ。