彼女も手を振り払うようなことはしない。
お互いそのあと声も出さず、じっとそのまま座っていた。
おそらく1~2分のことだろう。
でも、なぜだかとても長い時間のような感覚だった。

静寂を振り払ったのは中庭からの声だった。

「キムー!」
「ハルちゃーん!」

僕たちを呼んでいる。
握っていた手を離し、窓から見下ろす。
「キム、そっち終わったかー?」
「ああ、ちょうど終わったところだよ。」
「じゃあ水野とこっち手伝ってくれ。」
「わかった。」

僕は彼女の方を向きなおし、
「・・・だって。行こうか?」
「うん。」
彼女は少しぎこちない顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
きっと僕の方が固い顔をしていただろう。

僕が左側、彼女が右側。
2人並んで階段を下りていった。

かなり奥手な、僕の高校時代の思い出のひとつ。