「いや、そんなんじゃないけど・・・。」
「ふーん、ずいぶん仲良さそうにしてるからさぁ。」
「そうかな・・・。」
「そうだよ。1年生の頃なんて、全然女子と話してるイメージなかったよ。」
「ああ、確かにそうかも。」
「今もそうだけど、女子から話しかけれるとき、なんだか緊張してるみたい。
 男の子同士で話しているときは楽しそうなんだけどね。」
永井が笑いながらそう言うと、僕は苦笑いをして頭をかいた。
「木村君優しそうだから、もうちょっと女の子と話せればモテそうなのにね。」
「そうかな・・・。」
「そんな木村君が、ハルちゃんとだと普通に話してるからね、
 付き合ってるのかなって思ったの。」
「そっか。でもそんなんじゃないよ。」

「おーい、キム。キャッチボールしようぜ。」
「ああ、今行く。」
呼ばれた方を振り向き返事をした。
「じゃあ、おれ行くからね。」
「うん。じゃあね。」

僕はロッカーからグローブを取り出すと中庭に向かった。
「付き合う、か。」
意外な子からの意外な言葉に、少し戸惑った。
付き合うといっても何をしたらいいのか。
きっと空回りするだけだろうな、と容易に想像できる自分に、
階段を駆け下りながら苦笑いをした。