母親には今朝、夜は家で食べると言ってしまっていた。
なんとなく、家族には女の子と会うとは言えない。
照れくさいというかなんというか。
そんなに機会があるわけではないが、たまに女の子と会うことがあっても、
いつも友達に会うとか適当な理由を母親には伝えていた。

母親との電話を切ると、すぐに着信があった。
彼女からだ。
「もしもし?」
「私も今ついたよ。どのあたり?」
「えっと・・・」
目印を伝えようと振り返ると、そこに彼女がいた。
同じタイミングで彼女もこちらを振り向いたようだ。

「あっ、居た!」
そういうと彼女は電話を切り、こちらに駆け寄ってきた。
会うのはどれくらい振りだろう。
少し大人っぽくなった感じがする。
笑顔は初めて出会ったあの頃のままだ。
一般的にいえば、特別美人というわけではないと思う。
でもその笑顔は周りにいる誰よりも輝いてみえた。

見とれてしまった。
僕はまだ携帯を耳にあてたままだった。