「ちょ…そんなことで学校を休んだのか?」

「『そんなこと』?
大事なことじゃないか
きちんとした場所でプロポーズをするのが男の努め
それを仕事という理由でおざなりにするわけにはいかないんだ
有給を使ってセッティングするくらい
別に大したことじゃない」

大したことだろ!

なんて理由で学校を休んでるんだ

教師のくせにっ

何を考えているんだ

「あ…あんた、本気でそう思ってるのか?」

「ん?」

あいつが不思議そうに首を傾げる

「誠也の身体に流れてる血は
きっと日本のモンじゃねえな
フランスとかイタリアとか
あっち系じゃねえの?」

兄貴が呆れた声で言うと
ばたんと
ソファに倒れ込んだ

「あーねみぃ」と呟きながら
ガシガシと髪をかきむしっている

「廉人は仕事だろ?
さっさと行ったほうがいい」

「それって邪魔ものはさっさと出て行けってことか?」

「そうとも言うかな?
僕はそんな酷いことは言わないけど」

「しっかり言ってんじゃねえかよ」

兄貴がソファに座ると背伸びをした