あたしの仮旦那は兄貴の親友

「…ちゃん、果恋ちゃん?」

遠くから声が聞こえる

はっと顔をあげると
あたしの肩を抱きしめているあいつの顔が
近くに迫っていた

「ちょ…なんで…」

「廉人から鍵を借りて」

仕事帰りなのか
スーツ姿のあいつが
心配そうにあたしの額に触れた

「何をするっ!」

あたしはあいつの腕を叩いた

「少し熱があるんじゃない?
身体が熱いよ
熱、はかった?」

「別にただの食あたりだ」

「う、そ」

「なんでそう言い切れる」

「パソコンを見たよ
それに机の引き出しに入ってた」

昨日の妊娠検査薬の棒を
あたしの眼前で
あいつは揺らして見せる

「勝手に人の部屋を漁ったのか!」

「仕方ないでしょ
果恋ちゃんが明らかに嘘をついてるって
わかっちゃったんだから」