振り返ると白いボールが小さな点になり遠ざかってゆく。

「何してんだよ!!」

ピッチャー役をしていたリョウがマウンドから叫んでいる。
同じ様に古びたグローブを口元にあて、俺を急かせる。

「わりぃわりぃ」
「早くとってこい!!」
「わかってるって。」

後ろへ転がって行くボールを急ぎ足で追いかける。

「はぁ〜無駄に広いんだよなぁ〜」

グチグチ言いながら遠くに止まったボールを取りに行く。

ピッチャーマウンドから大声で怒鳴っているのはダチの"リョウ"。

ダチ?親友?腐れ縁?
リョウとは小学生の頃から毎日のように遊び、当たり前のようにいつも一緒だ。

…よく飽きずに付き合ってきたよなぁ。
リョウは世間一般で言う"不良"と呼ばれる人種らしい。
見事に染まった金色の短髪、両耳にキラキラ光る3つのピアス、今時珍しい短ラン、そして喧嘩がすごく強いと言うアバウトな噂が"不良"のイメージに大きく貢献しているようだ。
ただ、
実は、面倒見がよく、女からの人気があることを、世間話好きなおばさん共は知らないのだろう。

「いくぞー」
完全に停まったボールを拾い上げ、リョウに投げ返す。
『パシン』
「ナイスボール♪」