「・・・母さま・・・」


ナイジェルは、目の前の光景に手を伸ばした。

その瞬間、フッとその穏やかな光景は消え辺りは真っ暗になった。

ナイジェルがその暗がりを見回すと、先程とは違う場所が、ぼんやりと灯った。

ナイジェルは、目を凝らしてそのぼんやりとした光を見た。



「・・・うっ・・うっ・・サージェル・・・サージェル・・・」


先程まで幼いサージェルを抱きしめていた母親は、今度は暗い場所で身をかがめて泣いていた。

その隣には、父ガイルの姿もあった。



「サーシア・・あの子は必ず来る・・・

そんなに泣いてばかりいては、サージェルも来づらいだろう・・」



「えぇ、分かっているわ。

でも、もう何百年待ったかしら・・・

何千年かしら・・・

光の番人に、毎日尋ねに伺っても、サージェルはまだ来ていない、とお答えになるの。

あの子・・・

きっと、幸せではないのだわ。

何かに囚われて・・魂が彷徨っているのよ。

そう思うと・・あの子が可哀相で、可哀相で・・・」



「分かっているよ・・・

だからこうして、私たちも光の中へ入らず、その入り口で待っているんだ。

サージェルは必ず来る。

もし、彷徨っていたとしても・・・

必ず気付いて、こちらへやって来る。

私たちの息子だ。

信じて待とう。

これからまだ・・何百年・・何千年経ったとしても・・!」



ガイルは、優しくサーシアの肩を抱いた。

サーシアも、その腕に身を委ねた。