それを聞くと、サージェルと呼ばれた少年は、ベッドから飛び起きた。


「急がなきゃ!!」


「どこへ行くの?!」


サージェルの母親は、先程までとは違い、少し厳しい口調で少年に尋ねた。


「ほら・・昨日言っていた・・・」


「サージェル!!

今日はイケナイと言ったでしょう。

山焼きが終わったら行ってもいいわ。

でも、今日だけはダメ。」



「でも・・心配なんだ!

ちゃんと、子鹿が産まれたかどうか・・・

もし、難産なら助けてやらないと・・・

時間までには戻って来るよ!

だから、お願い・・・」



母親は困った顔をして少年に近付き、彼の柔らかい髪を撫でた。



「サージェル・・・お願い・・・

今日だけは、母様の言う事を聞いてちょうだい。

あなたは、夢中になると、すぐに時間を忘れてしまうわ。

王様は非情なお方よ。

もし、あなたが戻らなくても、何事もないように、山焼きを開始なさるわ。

母様はそれが心配なの。

あなたを危険な目に遭わせたくないの。

私と、それから父様の大事な大事な、たった1人の息子ですもの・・・」



母親は、半分涙ぐんでいた。



「・・分かりました・・母さま・・・」



サージェルがそう言うと、母親はホッとした表情を見せた。



「そう、良かったわ。

あなたが聞き分けのいい子で・・・」


そう言い終えると、母親は少年の金色の髪から手を離した。