瞬間・・・・


キャップの行方を身体ごと追いかけた由利絵は、今自分が階段に居た事も忘れ、つい足を階段から踏み出してしまった。


当然その方向は、100段もの石段が下っている。


・・・踏み出した先に足場はなかった。



「ハッッ!!」



由利絵の目は、ペットボトルのキャップを追っていた。


しかし、自分自身の身体もボトルキャップと同じように、階段の数段下に向かって宙を浮いていた。



----コーーーンッ・・・・コンッ・・・コンッ・・・コンッ・・・コンッ・・・コロコロコロコロ・・・・



由利絵がその音を耳にしたのと同時に、由利絵の身体にも激しい衝撃が走った。



----ガスッッ・・ズサーーーーーーーッッッ・・・ザザザザザザッッ・・・ズルッッ・・・ゴロン・・ゴロン・・ゴロン・・ゴロン・・ゴロン・・・



由利絵の身体は最初の衝撃から、数回激しく石段に身体を叩きつけ、挙げ句そのまま階段を転がり落ちていた。



「ハァ・・・ハァ・・・・アァッ・・・」



声を出すことも出来ず、昨日の雨で湿った石段は、途中で転がりを止める事も出来ず、由利絵は石段の始まりまで転がり落ちたところで、やっと・・・その動きを止める事が出来た。


しかし、それは彼女の意志で止まったわけではなく、物理的に傾斜が無くなったから止まったというだけの事だった。


止まった後の由利絵は、ピクリともしなかった。


100段もの階段を転がり落ち、


既に由利絵は、意識を失くしていたのだった。


下に転がり落ちた由利絵を見て、ハチは吠え続けた。


階段を上るでもなく、由利絵の元に行くでもなく、ただ吠え続けた。


どれくらいハチは吠えたであろうか。


あまりにハチが吠え続けるので、ようやく神社の人が階段まで顔を見せに来た。



「んん?」


ハチはようやく人が現れると、クゥ~ン・・・クゥ~ン・・・と、鳴き声を変えた。