好きなものを好きだと言いたい、それが私には難しい。

どうして言えないんだろう。

どうして言わないんだろう。

そんな風に考えていると私は一人になっていた。

高校入学当時、私が一番最初にしたことは、屋上が開いているかどうかの確認だった。

私は空が好きだった。

唯一私が胸を張って好きだと言えるもの。

空は晴れたと思えば雨、雨だと思えば晴れる。

晴れているのに雨が降るときだってある。

そこが私みたいで同種という名でリンクしている感があった。

だから好きだ。

似た者同士だと言ってくれさえすればいい。

屋上が開いていると分かれば私は図書室へ向かった。

教室は嫌いだったから別の場所を確保するためだ。

教室が嫌いなのは、皆が私を腫れ物扱いする。

する、というより、そういう視線を感じる。

きっと私が誰とも関わろうとしないから。

一度話し掛けられたが、

上手く素直になれずに皮肉を言ってしまったことが多分きっかけ。

図書室へ行くと、やはり人数は少なかった。

私としては嬉しい限りだ。

早速本を探そうと図書室全体を歩き始めた。

私が図書室からベランダに通じる面で足を止めたとき、

何か見えてはいけないものが見えた気がした。

開いてるベランダの窓の端から足が見えたのだ。

しかもそれはズボンだったため、男子だということが分かり、

スリッパの色が違うため、私と同じ一年生ではないということも分かった。

こういうことに関わるべきじゃない。

第六感が働いた。だからすぐに遠ざかろうとした。


でも遅かった。



「そこの一年生、話し相手になってよ。」


なんて笑顔で言われたら断りにくかった。

しかも断る暇もなく腕を引っ張られてベランダへと連れ込まれていたのだから。