【短編】LIVE HOUSE




いつしか夢中で、あたしはベーシストを目で追っていた。


なぜか目が離せない。


好みのタイプとかではないのに、


(かっこいい…)


そんなふうに心の中でつぶやいてしまうほどに、あたしはその人に心を奪われていた。


金髪の髪を無造作に立たせて、ハーフパンツにTシャツという姿だったけれど、そのTシャツは曲の合間に脱いでしまった。


あたしはぎょっとしたけれど、そのTシャツを観客席に投げた時、わぁっと歓声が上がったので、一種のパフォーマンスらしいということがわかった。


華奢に見えたけれど意外に筋肉質で、胸板が厚く、腹筋が割れている。


ベースを肩からぶらさげたまま両手で前髪をかき上げる姿がなんだか色っぽくて、その時ばかりは恥ずかしくて視線をそらしてしまった。


体を豪快に揺らして演奏する一方で、ネックを這う指はしなやかに動き、それはかっこいいというより"キレイ"と表現する方がしっくりくる気がした。


(どうして左手があんなに速く動くの?信じられない!)


あたしはその指に釘付けになった。