自転車を停め、俺は1年A組の教室へ向かった。

《あ…ここだ…》

クラスに入ると、明らかに学生服が明らかにおかしい男子たちがたくさんいた。

《マジかよ…ここって一応進学校なのに…》

俺は非行に走る度胸もない普通少年なので、内心ドキドキしていた。でも、中学時代からの親友が同じクラスだったから心強かった。でも…

《まだあいつ登校してないな…やっぱりちょっと遠回りして朝迎えに行けば良かったかな…》

俺の友だちは真面目で良い奴だが、朝がとても弱い。まさか高校生活初日も遅れてくるだなんてなんて思わなかった。

誰とも目を合わせないように自分の席を探した。窓際が良かったが、俺は廊下側だった。どうやら男子が廊下側で女子が窓側という風に分かれていた。

鞄を机の上に置いて、席に座った時だった。教室の入り口から、春らしい突風が吹き込んだ。ふと目を向けると、

《あっ…君は…》

なんと、桜並木通りで見た美少女が、俺のクラスに入ってきたのだ。

《嘘だろ…》

美少女は一番窓際の真ん中の席についた。

《桜の美少女と同じクラスだなんて…》

外を眺める振りをして、俺は美少女を見た。美少女は誰とも話すことなく、まっすぐ黒板を見つめていた。

《誰も知り合いいないのかな。なんて名前なのかな。まさか「さくら」だったりして…あっ、いけね。また妄想してしまった》

そんな俺の妄想を知る由もない美少女の横顔は、まるで丘に咲く一輪の花のように凛とした美しさを放っていた。