尽きない言葉


「ああ。終わったのか」


「マイペースすぎ」


篠塚を起こしたことだし、俺はもう学校に用はない。
帰ろうとした時、突然頭に軽い衝撃を受けた。


「ってぇ…」


俺の頭に当たって床に落ちた“それ”は篠塚が投げたものらしい。


「レモン……味?」


それは安っぽいパッケージのレモン味の飴。
不思議に思って篠塚に視線を向けると、あの弄るぞオーラ。


「…何?」


「あ?それ、飴」


「じゃなくて。
 何企んでんのかって」


一瞬キョトンとして、瞬く間にあの顔に。
篠塚が俺をからかう時の顔。
嫌らしい微笑みを浮かべた、あの顔。


「智哉君よ。女の子というものは
 初キッスはレモン味だと
 思っているのだよ」


「はぁ!?」


突然何を言い出すのかと思えば…


「つまり、真奈ちゃんもね」


「下の名前で呼ぶなよ。
 柊さんと言え……って、え?」


「キス、すんだろ?
 いい雰囲気だったもんな?」


「ばっ……!
 まだそーゆんじゃねーよっ!」