尽きない言葉


「さっきも4回説明したけどさ
 IとYou意外のときは
 sがつくの。ここ」


わざと“4回”のとこに力をいれて言う。


「あ、そうだった!」


「先が長いな」



でも、それから康太はsを付け忘れることなく、俺の出した例題を終えた。


「まる、まる、まるっと。
 おめでと。全問正解」


「まじ?ありがと、とも兄」


「お前、身についたら
 なかなか忘れないから
 大丈夫だよ。
 それまでが長いけど」


そう言って康太の頭に手を乗せると、あの笑顔。

悩殺スマイルと言われる、子供の頃から変わらない笑顔。


「さ、次だ次っ!」


「はぁーいっ」


「…はよ。」


「おはよ。
 朝ご飯、トーストでいい?」


「うん、頼んだ」


そのまま洗面所に行って寝癖を直して、軽くワックスで整える。

昨日の夜、康太が覚えたの“3人称・単数形”と“現在形”の2つだけ。
どっちも中1の勉強。
かなり初歩的なとこで躓く康太への不安はたった一晩でかなり募っていた。