切れ長の濃い藍色の瞳は家臣二人を見たと思うと某を強く見た
「二人とも、下がっていてくれないだろうか」
杉藤殿の言いたい事が分かり渋っていたが二人を下がらせ話し掛けた
「話を、続けて下され」
翡翠色の瞳が杉藤を捉えた
「あんたは俺達が何をするかは知ってるよな」
「御存じある」
「・・・、古い歴史だ。俺の国だけが唯一伝えらる事を認められている。歴史は決められた者だけが知る事を許される。
俺から言う言葉はこの戦はあんたには止められない。それだけだ」
淡々と、だが重みのある言葉に某は息を呑む
だが今しか美羽殿の事を聞けるのは杉藤殿しか居ない。今此処で聞けなければ某は、二度と美羽殿と出会えないと思う
たった数時間しか会話を交わしていないあの方に、某は何故こんなにも思うのだろう、何故こんなにも・・・彼女が某に微笑んでいたあの顔が今も離れないのだろう
「杉藤殿・・・それでも某は知りたいのだ。美羽殿はどちらに向かわれたのか、教えて下され。覚悟は承知の上」
杉藤は目の前の男は己が知っている男なのかと疑った
この男は何故こんなにも必死なのかと
「(女とは恐ろしいものだ。この男をこれ程変えた女とは一体どんな女なんだ)・・・此処より南に向かった」
「っ恩に着る杉藤殿!」
家臣を呼び馬を走らせて行く圭吾の姿に杉藤も馬を走らせた
前を走っている者達から離れて走り後を追っている杉藤はニヤリとした
「生き残りの姫、そしてあの男をああまでした姫か、実に興味が湧いた」
「あんたもそうだろ?」
杉藤はまるで誰かに話し掛けているような口調で話していたのであった

