迷姫−戦国時代

「姫様、私(わたくし)は姫様と共には行けません。私は鶴水城に長く仕えている身。私は此処に仕える時に誓ったのです。鶴水城と共に生き、鶴水城と共に最期を果てようと・・・。
言わば私は此処を離れるのは己の生きた全てを棄てる意味でもあります。離れるなど、私には堪えれません故。ですので私は城に残ります、離れる訳にはなりませんのです・・・。どうか、キヨの我が儘を聞いて下さいませ」
そう発したキヨの姿はまるで誇り高き千紫の花(女)そのものでした


「・・・分かりました。
貴女の意思は私、桜美家長女 美羽がしかと聞いた。貴女に最後の命(めい)を出しますしかと聞きなさい」

「はい、必ずしも心して誓い申し上げます」
正座をし頭を深く下げ凛とした声で返事をした

「我が城・・・鶴水城を護るのです。私の変わりに・・・必ず」

「はい。キヨめは必ず御護り致します!」

美羽はキヨの手を優しくだがしっかりと握って
「キヨ、私は必ず此処に帰って参ります。


必ず、

だからさよならは言いません。


また、



     お会いしましょう」

その言葉を残し美羽はニコリと微笑み立ち上がり打掛を頭から被り人目に付かない様にして城から出た

すると宮火が馬に乗りこちらに走って向かって来たのを確認し彼に手を引かれ馬に跨がった

宮火は何も言わず馬の手綱を引きより一層早くした







彼女は一度後ろを振り向き城の姿をしっかりと目に焼き付けたのであった























さよならは言いません

何故なら






私は







千紫の姫であるからです