迷姫−戦国時代

美羽はもう一度襖の向こう側にいる秋影へと声を掛けた

「御兄様・・・兄様、此処を開けて下さい。私も兄様と共に此処に残り、戦います。

私も桜美の人間として戦います」


「兄様か、やっと前の様に呼んでくれたね。君は此処に戻って来た時からずっと僕達の事を昔の様に呼んでくれなかったから実は皆、寂しかったんだよ」

「それは・・・、いきなり皆の前に現れた私は、怖かったのです。拒絶されたくなくてだから「そんな事は皆は最初から知ってたよ」・・・兄様は何故駄目なのですか、私だと足手まといになるからですか」

「駄目だ。それじゃ駄目なのだ。
美羽は逃げるんだ。美羽、そなたは生きろ、生きるんだ。そして必ず、我ら千紫・・・桜美一族の誇り高き血を、志を後世に伝えてくれ。これは我等千紫の桜美家当主としてまた、兄としてのお願いだ」

「兄様・・・」
涙を流しながら崩れ落ちていく美羽


襖の向こう側にいる秋影は美羽のか細い声を聞き手を強く握り締め苦しそうな表情をしたが顔をゆっくりと上げ前へと進んだ







美羽、唯一無二の愛しの妹よ僕はこの国の為に命を掛ける。それを分かってくれないか





秋影は歩き出しながら敵の当主が待ち構えている方へと向かった












文に書かれていたのは

敵の当主とこの国の当主との一騎打ちだとの事だった







美羽、そなたはこの戦には決して関わってはいけないのだよ


決してね