「えぇー!?オイラ旦那探して疲れてるんだよー!仕事って酷くない!?」


「忍がこんな事で根をあげるなんて情けないぞ」

五郎の横で叱る国東に圭吾は人差し指を立てながら


「人探しなんだ。簡単だろ?」

「「ハァ?」」

驚いた顔をした二人にさらに追い撃ちを掛ける様に


「何処かの領家の娘だと思うんだが名前は由利、某より一つ…ううん三、四ぐらい下の娘で瞳が薄茶に少し赤が入ってるんだ。出来るよな?」

否定はさせない断定の残酷な言葉


圭吾の様子に眉と口をひくつかせながらも
「薄茶に赤の瞳なんて早々居ないから楽勝だけど・・・・見つけたらどうするんだよー?」


「圭吾様まさか・・・」


「分かってるなら行くんだ。某達には時間が無いんでね」


「は!この国東 隼人(くにさき はやと)は柏木 圭吾様(かしわぎ けいご)に何処までも着いて行きます」

背を真っすぐに伸ばし圭吾を見据えた

「羽柴 五郎(はしば ごろう)行ってきまーす」

半ば自棄になりながら五郎は一瞬でその場から消えた





二人の間に沈黙が流れた



だが沈黙を破るように圭吾はポツリと吐いた

「楠木殿は何故大して大きくもない千紫を攻めようとしてるんだろう。
某には分からない。
分かりたくもない」

「ですが楠木とは同盟国です故に圭吾様」

「分かってる。だが某は・・・」

悲しげな表情で桜花を見上げながら




聴こえるか聴こえない位にか細い声で


「由利殿の悲しむ顔は見とうない


だが某は西賀の当主故に・・・」






「悲しき時代よ」

圭吾は目をゆっくりと閉じた




まるで立派に咲いている目の前の桜花を見ない様に