美羽に憑依し、舞う舞歌の姿に光彦は異様に映った
たしかに美しい
この様な美しい舞を見ることは稀としてない
だが光彦から見た舞は枯渇した者が漸く潤いを得たような、ただその求め方があまりにも勢いを応じる様だ
周りの者達は舞に魅いるばかり
ただ向かいにいる柏木はこの空気に異変を感じているようだ
光彦は彼の父親だある楠木をもう一度見たのだった
先ほどの涙はどこにも見られなかった。寧ろ何処かを眺めているような表情だ
このままでは誰も止めぬままだと舞歌は好き勝手に舞続けるだろう
本来神が憑依するのには媒体の身体が必要だ
互いの同意の元で有るならば負担もない
本来神の加護を受ける一族は負担を受けにくい。だがそれ以外の者だと身体への負担が大きすぎる
舞歌が勝手に憑依した美羽の身体は徐々にその影響を受けてるだろう
なによりも彼女は・・・・・・
「狂ってる」
光彦は何かを決めたように向かいにいる男へと向けた
お前が曲を終わらせろ
口では言わず目で男へと訴えた
その鋭い眼光に翡翠色の男は目を見開き、ゆっくりと頷いた
襖にいる演奏者二人から主導権を奪うのには一癖ありそうだ。何せ神である舞歌が操っているのだから
だが相手がどうだか
先ほどの音から、調和を保っていた横笛の音色が強く主張をする
西賀の神はもとより横笛の使いとした長けていた。自然と国にもそのように横笛の才を持つ者も多い。その中でも目の前の男は特に濃く受け継いでいる
曲は次第に終盤へと持っていく
どうやら成功したようだ
この異変に舞歌は直ぐ様気づき光彦を睨み付けた
光彦は気にもしないように真っ直ぐ見据える
演奏が終わると同時に扇子が顔の位置へと持っていかれた
プツン
なにかが切れたように、美羽は崩れ落ちそうになるのを光彦は素早く受け止めた
「皆の者、いかがだったな。美しい舞を。・・・失礼だがこの者は無理をしたみたいだ。紹介はまた後日、下がらせてもらいたい」
光彦の言葉に周りのは舞の余韻が残っているのか、惚け気味だ
そのことを良いことに光彦は直ぐ様美羽を下がらせたのだった
途中、柏木がこちらを見て何か物申したそうだが気にすることなく宴の間を退室したのだった

