迷姫−戦国時代

「さあ儂の隣へこい」


扇子で顔を隠したおなごは楠木に導かれた場所へ向かう


顔は見えないがおなごの着た漆黒の打ち掛けは紅梅色や鴇色で描かれた梅を主に蔦や花が描かれていたそれは高貴な者が着るのに相応しい出来だ


髪は上を結い上げ金の簪をつけ下の髪は何もせずに歩く度に美しく揺れる。芳しい香におなごが通り過ぎた後の家臣達の目はどこかとろりとしてる














圭吾はその髪色に見覚えがあった
寧ろ思い浮かんだ人物で無いように願う





そして楠木と彼の息子の間に座れば部屋には妙な雰囲気が流れるのだった



どうやら彼の家臣達もその人物に見覚えがないのか、当主の応えを待つのだった









そんな様子を楽しむように楠木は鼻で笑う



誰もの視線が楠木へと向く






「今宵、この者が皆を楽しませてくれる。顔を出すのじゃ」







おなごはゆっくりと扇子を顔より下へ下ろせば息を飲む音が聞こえる




それは圭吾も似たような者だが他の者より些か違った






翡翠色の瞳は動揺し揺れ、鼓動が早く脈立ち僅かに汗が出す

そんな彼の変化に気付いた者は彼の横にいた国東だった


「圭吾様、いかがなさいましたか」

他に聞こえぬように耳打ちするように





「美羽殿・・・何故此処に・・・」