迷姫−戦国時代



並べられた膳の部屋へと着けば、青年は誘導されるように座るのだった





彼の他には十人くらいいる
ただ彼の座る斜めにはこの国の当主である男がいるのであった




「さあ、今日は宴だ。皆盛大に飲め」

当主もとい、楠木が口にすれば酒を持ってきた女官が出入りする
青年も酒を手元の杯に注がれれば他の目もあり仕方なく口へと運んだ




西地方独特の芋で作られた酒は甘みは弱いが飲み干したあとも口の中で消えないそれに自国の酒と比べる



青年もとい圭吾は思った
このような癖のある酒をよく浬張の者は豪酒できるな、と


もともと酒は苦手ではない圭吾だったが宴の手前、嫌な顔せずもう一口口へ含んだ




彼の隣にいるのは部下の国東だが、口に合うのか機嫌が良さそうだ





そんな部下をよそに圭吾は膳に手をつける





楠木は酒が回っているせいかやけに機嫌が良さそうだ

そんな彼とは反対に真正面にいる時期当主、楠木の息子でもある光彦は自身の持つ杯を円を書くように揺らし眺めた後何を思ったのかそれを台へ置く

そしたら襖が控えめに開けば若い女中が替えの酒が入った物を持ちながら静かに楠木の横へと付き空の酒瓶と交換し下がっていった


だが圭吾と光彦は見逃さなかった

交換の際に彼女が楠木へと耳打ちをし、”それ”は楠木を大いに喜ばせるものだと






「さて、皆は酒のつまみに何か足りないと思わないか?」






それを聞いた家臣の1人が上機嫌に「この場に酒もつまみもそろっております。殿は何を御要望でございますかね?」と応えれば手元にある酒を飲み干し口元を釣り上げた






「儂が欲しいのはこれだ。


入れ」







入口の襖が大きく開けば



漆黒の色を纏った薄茶色の髪の色をした女が立っていた