「ん・・・・」
パチリと目を覚ませば、ぼんやりと辺りを見渡すのだった
少し乱れた髪を押さえながら起き上がれば、此処はどこだろう・・・と眉を下げたのだった
だがそれも徐々に目を覚ましていくのだった
灯籠によりうっすらと部屋が明るい
じんわりと暑さを感じるのか、少し汗が滴る
息をするのも苦しかった
美羽の目の前には、否、真っ正面には整った鼻筋、長い睫毛により隠された瞳が開かれた時には何を映すのだろうか
恐ろしい言葉を紡ぐその口は、今は私の口を封じるものだけであった
どんなに押しても引いても動かない相手に最早諦めるしかないのかと美羽は思ったのだった
初めてのキスがこの男によって奪われた事に変わりはなかった。この男は私を蔑んでいたはずだ。それは今日一日で嫌でも十分に理解していたはずなのに何故、何故こんな行為をしたのか分からなかった
ただ一つ分かったのは、荒々しいキスとは違い、優しいキスだった
ああ悔しい悔しい
悔しい・・・・・・・
だが次には光彦の片手が動いたと思ったら
首に鈍い痛みと共に私は意識を失ったのだった
私が覚えているのは此処までだった
私が寝かされているこの部屋は昨日の部屋で間違いがなかった。恐らく彼が寝かしてくれたのだろうと嫌でも分かる。その証拠に枕元には新しい服と一枚の文が置かれていた
美羽はカサリ、と音を響かせると文を広げるのだった。そこには短く達筆に掛かれている文字を見たのだった
ーーー某一日、その部屋を使いなさい。朝夕の御膳もその部屋で行うこと。時刻が近くなれば此方から向かう
その文を見た後にタイミングが良く襖の向こうから声がしたのだった
「おはようございます。お目覚めでございましょうか美羽様。お膳をお持ちいたしました」
それはまつの声だった事に安堵しながら返事をしたのだった

