光彦は歯痒い表情をしたのだが、次にはその表情はいつもと変わらぬ冷たい表情になったのだった
「いきなりは悪かった。明日は確かめたい事がある。あんたにも同伴してもらう。時刻は午前西の刻だ」
「・・・分かりました」
明日の約束をしたのにも関わらぬのに光彦は一向に部屋を出ていく気配が無かった。無論、それは此処が彼の部屋だからだ
美羽はその事に気付きながらも部屋を出ていこうにも己の部屋が無い為にどうしようか迷っていたのだった
無論、美羽が困っている様子に光彦も気付いていた。だが彼は敢えて何も言わなかったのだった
そして、釘を刺すように美羽へと話す
「あんたも子供じゃない。年端の男女が近くにいるとこうなることも分かっているだろう。それにあんたは・・・」
美羽は次の言葉をハッキリと聞きたくなかった。否、分かってはいた。だがそれを突き付けられるのはどんなに辛いのか、矜持を傷つけられるのか。無論この男はそれを知って敢えて言うのだ。己を逃がさないように
縛り付けるように
「我が国の戦利品だ」
毒のようにそれは心を蝕んでいくのだった

