「仇討ち・・・」
光彦の言葉に美羽は目を見張ったのだった
仇討ちとは本来自分の主君や肉親などを殺した人を討ち取って恨みを晴らすこと。仮に先程私に襲ってきた者達はあの時の戦で身内等を亡くし、その恨みが積もって起こしたのなら私にも分かるわ。でも・・・
千紫はいつ恨みを買ったの?
国を潰す程のことを我が国は、起こしたの・・・?
身体がゾクリとした
「仇討ちとは・・・。やは、り」
「別の言い方をするならば我が国で血の結束は絶対なんだ」
思わず言葉をと切らしてしまった美羽だがそれを補うように光彦が話すのだった
「あまり詳しく話さないが我が国では身内の立場がどれ程脅威でまた、弱みなのかを知っとくことだ」
その言葉を聞いた瞬間美羽はあることを思い付いたのだった
仮に私が楠木の一族の一人を人質にすれば、どうなるのだろう
考えられるのは二つ。まず一つは相手を楯にすれば私には手を出せないこと。だけどもう一つは激しい怒りを買うことにより思わぬ事態になる恐れだ
もし、今私が目の前にいるこの男を捕らえることが出来たのなら、どうなるのだろう
楠木を・・・否、
此処から逃げ出せるのだろうか
「おい」
意識を途中で中断し、相手を見ようとした次の瞬間美羽は思わぬ方向に引っ張られた
「善からぬ事を考えるなよ。それは気宇に終わる」
光彦に強引に引かれた美羽は次には彼の腕の中にいたのだった。片手は美羽を離さないように支えもう片手は美羽の顎へともっていく
二つの朱色の瞳が合わさり、傍らの朱色が揺れるのだった

