迷姫−戦国時代

行ってしまった・・・

私は何を期待していたのだろう、馬鹿ね・・・




ふと包丁を掠めた左腕がじんわりと痛みを再開した

その事に気付いた美羽は袖を捲り掠めた場所を確認したのだった


胸元から手拭いを取りだし傷の所に当てるように結べば深く溜め息をした











ああ何故、こうなったのかしら


美羽は顔に手を当て俯いたのだった



あの戦から、私の心はずっと気が気じゃなかった




私を守る為に二人は私に付いてくれてた。まだほんの僅かだが他国との協力ももらえるようになった。でも、肝心の私が捕まってしまっては全てが駄目になってしまう






悔しい、悔しい

無力な己が悔しい









「ーーーなら、此方に来なさい」



鈴の音の様な可愛らしい声に聞き覚えがあった

美羽は手を退かし顔を上げればあの夢で見た女の人が此方を見ていた






リリーン、リリーン

皇朱の鈴の音とは違う音を出しながら美羽の目の前へと一歩一歩近付いてくる







「此方では始めましてかしら」




口元に手を当てニコリと微笑む姿は誰が見てもとても愛らしい印象的を与えるだろう

彼女を一言で表すなら可憐だと思う

不思議な雰囲気を漂わせ何処までも深い真朱色の瞳に美羽はとある人物を思い浮かべた






怒りに染まった光彦の瞳と似ていた




彼女の可憐な笑みは一変にして何処までも闇に堕ちた瞳に変わっていけば先程の鈴の音の様な可愛らしい声とは別にどすのきいた声になった


「ねえ、貴女は何故いるのかしら」