迷姫−戦国時代

そこは美羽の部屋より大分距離のある広い一室だった。襖の奥には部屋が続いているだろう


「此処で待っていろ」

誰かの部屋だろうと思われる部屋に連れられ、美羽を一人残して出て行こうとする光彦に美羽は思わず声が漏れた



「まっ・・・」

待って・・・
そう言おうとして止めてしまった
でも、正直一人残されるのが怖かった




普段の美羽ならそんなことはしなかったはずだ


だが一日に二度も命を狙われたから不安でしかなかった。しかもその一度はこの男だというのを忘れてはならない


けど、けど・・・




助けられた時のあの瞳を見て








分からなくなってしまった



「此処は俺の部屋だ。他者の浸入は許されない。後始末をしてくるだけだ」




そのまま美羽を残して光彦は部屋を後にしたのだった
















俺は起きた事態に舌打ちをした

俺の指示で警備を解いた矢先にこの事態だ


油断していた。あの風呂場での出来事で一人勝手に思い込んでいたようだ

あの女はまだ完全に染まりきっていない。だから目を見ぬ限り判断が出来ないのだと





そして、国では機密にしていたのに何処から情報が漏れたのか。それは城の中に裏切者がいるということだった

これは間違いなく己の失態だ







それと今回起きた事件での失態はもう一つ、精鋭部隊も偵察で出払い、忍の者も父上によって任務に出掛けていたのだ

だから城の中が手薄になり今回の事態になったのだ




取り合えず俺は部屋に戻る途中に漸く見つけた女中に部下を数人呼びにくるよう任せれば、辿り着いた