迷姫−戦国時代

先程何事も無かった畳の上に新たな汚れが生まれた。それは信じられない光景だった


気付けば部屋の中には美羽と光彦だけで、美羽を襲った者達は全員生きてはいなかった




美羽は目の前で起きた光景に目を見張るしかなかった



この男は必死に頭を下げている者に対して、私の意見等全く耳を貸さずに何の躊躇いもなく殺したのだ。己の国の民を








美羽は殺されそうになった恐怖よりもこの男の怒りに満ちたどす黒く染まった瞳が怖かった

温室で育ってきた美羽にあの様な瞳は、今までに見たことなかった。だから恐怖だった




一度は命を狙われた相手なのに今は助けられた。相手の心境が全く分からなかった





そして、


この男は危険だと









しかし光彦はそのおぞましい瞳を美羽に見せることはなかった









「部屋を変える。移動するぞ」



短刀に付いた血を拭い鞘に仕舞えば廊下側へと向かう光彦に美羽は何とか立ち上がりその後に続いたのだった