女の首を絞めていた男は俺を見るなり朱色だった瞳を見開きその手を離した
美羽がそのまま下へと倒れこむのを見た光彦は美羽の左腕を見つめた瞬間に怒りが激しく燃え上がった
その中でも光彦は歩きだし、呆然と見つめていた男に無造作に斬りつけ倒れた姿を確認せず二人へと詰め寄ったのだ
その様子に朱色の瞳が徐々に薄れ、男は小刻みに震えだしたのだった
「誰に、手をだしているんだ」
空気がはりつめた
男はその言葉に完全に意識を取り戻し、直ぐ様頭を下げたのだった
「申し訳ございません!まさかこの方が・・・。しかしわたくしは、わたくしは・・・」
「どのようにしても、お前達は法を破ったのだ。それを見逃すことは出来ない」
男の話を聞くよりも早くに光彦は弁解をはね除ければ、短刀を握る手に力をこめる。その様子にいち早く気付いた美羽は何とか起き上がり光彦へと叫んだ
「待ってください!先ずはこの方の意見を聞いてください」
何故この女はこいつを庇うのだ
こいつらはお前を殺そうとしたんだぞ
お前の受けた傷を見ろ。こいつはこの国の法を破ったのだぞ
例え今更ながらこの女の身分を気付いたとしてもこの男の罪は大罪だ
それに、この男達がお前を殺そうとした理由なんて始めから分かっている
男の後ろから必死に俺を見つめている女を無視するように、俺は頭を下げたままの男の前に立ち止まった
「お前達の意思は分かっている。それが浬張(くに)の性(さが)だ。
だがな」
俺は短刀を勢いよく男の首もと目掛けて刃先を向ける。途中で女の止める声が聞こえたが勢いは止まらなかった
「此処を納めてるのが、我が一族だ」
短刀を引き抜けば男はそのまま動かなくなった
お前達は、千紫との戦で息子を失った者達だとは始めから知っていた。その憎しみと悲しみが仇となりこの女に向かったのは分かる
だがお前達は大きな失態をした
殺すよりも先にお前達はこの女の瞳を確認する事をな・・・
仇討ち、それが浬張の性だ

