迷姫−戦国時代

此処は西に値する浬張


辺りは静まり時折風が木々を揺らす音だけが聞こえる


そんななか美羽は一人寝付けづにいた・・・




「う・・・ん」

先程から何度か寝返りをうつのだが一向に眠気が襲ってこないことに美羽は頭を悩ませていたのであった




眠れないため気分転換に部屋を出ようにも飽くまでも美羽は監禁された身であるために下手に身動きができないのであった








こんな時に限って今はもう薄れていってる前世の記憶を思い出してしまう



「・・・ッ・・・」


駄目、泣いてはいけないわ




時が経つに比例して前世の記憶をリセットされているのを美羽は日に日に実感していたのだが、その中には大切な家族もある


美羽は必死に忘れないように幾度も家族の顔を思いだしているのだがそれと同時に、



「兄様、父様、朝波・・・宮火」


こちらの世界の人の顔が浮かび上がってしまうのだ






忘れたくない、忘れるはずがない。私が此処に存在出来てるのは、前の世界であってそれは決して忘れるはずがないのだから




お父さん、お母さん。もう一度私の名前を呼んで・・・?貴方達が付けてくれたこの名前を




もう一度、私に聞かせて・・・











刹那、全身から強い殺気を感じ取った美羽は飛び起きたのだった

その殺気は徐々に此方に近付いてくるのではないか


美羽は直ぐ様迎え撃つ構えをしようと懐に手を寄せるのだが




「あ・・・」




そうだ、兄様に預かった懐刀はまだ滝沢の手元だったんだ。何か武器になる物はないかしら



しかし部屋の辺りを見回すも生憎この部屋には武器となる物は見当たらなかった。そうしている内に殺気は美羽のいる部屋へと一直線に向かっていて美羽は益々焦るのであった





美羽に考えさせる暇も無く障子は勢いよく開けられたのだった