迷姫−戦国時代



「そういえばこれは貴女の物か?」

玄司が差し出したのは花形の髪飾りだった


「はい。ありがとうございます」




「布で桜の形か・・・うぬ、考えたものだな」


美羽は受け取った髪飾りをギュッと手元に握れば、悲しげに眉を下げた

「でもこれはまだ途中段階であります。それにこれはもうよう済みですので」









「小生は薬草には詳しいのだが花はあまり知らぬ。聞いた話では技術士が花を用いた物を造るには意味があるのだろ?」


「異なりますがそうとも言われてますね。私の場合は玄司様の言われたとおりになります」



玄司の言葉に美羽は頷くと同時に己の故郷を懐かしむのであった

千紫では贈る側に似合った花飾りを贈る風習があり、人によって意図が全く変わっている。その中で美羽が選んだのは桜であった










この桜の髪飾りは・・・



八重さん、貴女に捧げる物でした。でももうそれは出来そうにないです。きっと私と貴女は二度と出会う事は出来ないでしょう



私が死ぬかそれとも貴女が・・・

そして離ればなれになってしまった宮火。私は貴方が生きてると信じています

あの時の誓いを信じて・・・


ーーー何があろうと、生きていきます




美羽は可能性を信じて玄司に向き直った




「玄司様にお願いがあります。もし・・・私が経ってからこれに似たのを売る旅商人が来たのなら、その方に言伝てをお頼みしたいのです」


「立場上今ここで貴女を助ける事は出来ないがその望みなら協力出来る」




「ありがとうございます。お願いはーーーー、」