「これ、これ・・・」
男は声を掛けても起きない美羽に、今度もまた肩を揺すって起こそうとした。内心先程の事態が起こらない事を願ってだ
「ん・・・、こ・・此処は?」
まだハッキリと覚醒はしていないが、目を覚ました美羽は男の姿をボンヤリと見つめていた
「(先程とは違うな)此処は黄州が治める山の中だ。貴女は倒れたそうだな」
そこで漸く覚醒した美羽は立ち上がろうとして掛けてある布団を退かそうとした。しかし男はそれを許さず美羽の肩を掴み阻止したのだ
「今の貴女は睡眠不足、栄養不足と極度のストレスによって身体が弱っている。今は何も考えず、暫し休まれよ」
「スト・・レス・・・・」
「ああ、ストレスとは−−−」
刹那、美羽は全身から血の気が引いた
男は美羽が聞き慣れない言葉に反応したのでその意味を説明をしているが肝心の美羽はその言葉など全く頭に入っていなかった
何故この人は異国語を・・・?
昔調べた所によると異国語を用いた国など何処にも・・・
前世では聞き覚えのある言葉を、この人は何故使っているの?
もしかして私の他にも此処に転生した人が居るの・・・?
美羽は凄まじく押し寄せる動揺を相手に気付かれない様に相手に微笑み返した
「黄州では、医療が発展しているのですね」
先程は動転していたが、それを何とか押さえた美羽は以前朝波が口にしていた事を思い出したのであった
−−−「黄州はさ、内陸部なのにも関わらず医療がとても進んでいるんだよ。別名長寿の国とも言われているんだよ」
それを話している時の朝波は、何か隠している様にも美羽は感じていたがただ黙って頷いていた
美羽はそんな事を思い出しながら、目を伏せめがちにし聞こえるかぐらいにか細く呟いた
「自己管理もまともに出来なくては、駄目ですね」
か細く呟いたそれは、とても弱々しかった

