襖が閉じて足音が聞こえなくなった瞬間に父武則は息子秋影を真剣に見つめた

「儂はそちよりも五歳下のまだ幼い美羽が心配じゃ。そちはどうじゃ?」

「心配とはどのような?」

「うむ、美羽は見ての通り誠に愛らしく賢い娘だ。そして美羽、あやつの星占いで宿命を調べさせたのだが・・・」

「美羽の宿命がどうなっていたのでございますか?」

「あやつは容姿、素質、地位、全てに恵まれて生まれてきた。そして成長し戦国乱戦の中に巻き込まれその中を生きていかなければいけない宿命なのじゃ。恵まれたのが裏目に出てな」

「!!それは、逃れられないのでしょうか?」

「宿命だから無理じゃ。それから逃れるのは無理じゃ。だが遅らせる事は一つだけある」

「それは・・・?」

「あやつを消すのじゃ」
唐突な武則の発言に秋影はビクリと震えた


「っ!!・・・・して、消すとは」
少し声を震わせながらの発言に武則はいつもはしっかりしてい秋影を今はまだ十歳ばかりの幼い息子なのだと感じさせた

「美羽は年月を経っていくにつれ、大層美しくなるのは見て分かる。それゆえに城下からその噂が流れていき商人へ・・・それを聞き付けた武将達の中には必ず興味を持つ者が多数いるだろう。じゃが、初めから姫の存在自体を流さなければ良いのではないか?」

「それならまずは城内を口止め、次に商人に城下にですね。ですが美羽はどうなさるおつもりでございましょう父上?」

「うむ、あやつはおてんば故にいっその事城下に「城下になんか行かせたら変な虫が着きますぞ父上」・・・そうか。そなたはどうじゃ?」

「南蛮に行かせるのはどうでございますか」

「馬鹿者が、それこそ変な虫が着くではないか」

「う・・・」
項垂れている秋影を他所に

「せめてあやつに護衛を付けようかと考えている」

バッと顔を上げて
「側近ですか?」







息子秋影を見つめ
「否、忍じゃ」