あの後、馬小屋から出て来た美羽はキヨに言われた通り渋々部屋に戻っていた

「うぅ・・・私の幸福な時間が」

しょんぼりとしていたらいきなり視界が暗闇になった

「!?」

クスリ、と後ろから笑い声が聞こえた

「さて、お忍びが上手な悪い姫様は何処かな?」

声の主が分かった美羽は視界を隠している人物の手にそっと手を添い
「私は姫様ではなく、ただの美羽です」

意地らしく言い返せば

「残念だな、昨日生まれた子馬を美羽様に贈り物だと父上が申されてたのに」
ピク・・・

「ただの美羽にはあの子馬はあげれないね」
ピクピク

「うーん、美羽様はいないんだから、それじゃあ僕がもらっちゃおうかな・・・」
言い終わると同時に美羽は素早く後ろを振り向き

「ただの美羽はいなくなりました!姫様は戻って来ました!だから兄様・・・」

兄様と呼ばれた少年は美羽の五歳上で髮は少女と同じ色で少し長いのか後ろに結び、顔も少女と少しばかり似ている

名は桜美 秋影





「美羽、父上が呼んでいるから一緒に行くよ」

「はい兄様」



返事をし手を繋いで歩いて行った